前回に引き続き、今回もサルサのスタイルを紹介していきたいと思います。
今回紹介するのは「カリスタイル」。
初めて聞く人がまず思うこと、それは、「カリって何?」ではないでしょうか。
カリ(Cali)はコロンビアで3番目に人口が多い都市の名前です。
首都のボゴタや、今や世界中で知られるコロンビア出身の歌手、シャキーラが生まれたバランキージャなどと言った都市名は聞いたことがあるかもしれませんが、カリなんてなかなか聞くことがないですよね。
私自身、サルサをやっていなかったらきっと、そんな都市が存在することすら知らずに生きていたことでしょう。
さて、そんなカリで生まれたサルサが ”カリスタイル”。
カリスタイルは、コロンビア以外では他のスタイルに比べると踊られている人口も少なく、まだまだマイナーなスタイルだと思われます。
ただ、サルサのメッカとも呼ばれるカリで毎年開催されているFestival Mundial de Salsa(サルサ世界フェスティバル)には、5,000人にも及ぶダンサー達が出演し、6日間にわたってそれはもう熱狂的なステージが繰り広げられるとのこと。
私は残念ながらまだカリには行ったことはありませんが、これまでにカリ出身のプロのダンサー達と一緒に仕事をし、レッスンを受ける機会にも恵まれ、彼らから多くのことを学んできました。
今回もこの記事を書くにあたり、カリスタイルが世界で知られるきっかけを作った、2005年World Salsa Championship(サルサ世界大会)の優勝者である、カリ出身のダンサー、Ricardo Murillo(リカルド・ムリージョ)氏に協力してもらっています。
では早速、そんなカリスタイルの特徴を紹介していきたいと思います。
【カリスタイルの特徴】
①基本ステップはバッククロスステップ
②ペアでは技よりもステップが多い
③強拍(アクセントとなる音)でリズムをとる
④体を使ったムーブメントが少ない
⑥ショーではテンポが速い曲が好まれ、多くのアクロバットが繰り広げられる
それでは一つずつ細かく見ていきましょう。
①基本ステップはバッククロスステップ
まず、カリスタイルでは基本ステップは前後ではなく、男性も女性も斜め後ろに踏みます。
つまり、バッククロスステップ。
両手を握って男女向かい合った状態で、まさに鏡のように対照的にステップを踏んでいきます。
②ペアでは技よりもステップが多い
そして2つ目の特徴はこれはペアダンスでは意外かもしれません。
サルサでペアダンスと言えば、やはり様々な技が繰り広げられるイメージがありますよね。
しかしカリスタイルでは、技よりもステップです。
キューバンみたいな複雑な技をしたり、NYスタイルみたいに女性をくるくるスピンさせたりするのではなく、カリスタイルではペアで踊る時も様々なステップを男女一緒に向かい合って踏むのが特徴です。
ここでRicardo先生の動画を紹介しましょう。
これはショーでもパフォーマンスでもなく、ソーシャルにより近いかたちで踊られています。
この動画を見ると、後ろ斜めに踏む基本ステップ、そしてペアでもいかに技よりステップの方が多いかがわかるかと思います。
③強拍(アクセントとなる音)でリズムをとる
サルサでいう強拍とは、カウントでいう1と5のことです。
曲の中で一番強く聞こえる部分を指します。
強拍に合わせて踊るということは、123 567が存在しないので、123 123のようにアクセントのみ意識して踊ることになります。
現在では、レッスンを受けている多くの人々は123 567のカウントで踊るようになったそうですが、そうでない人達は今でも強拍でリズムをとって踊っているとのこと。
なのでもしカリに行き、踊っている時に123 567が逆になってずれてしまったと感じることがあれば、それはカウントではなく強拍で踊っているということです。
④体を使ったムーブメントが少ない
カリスタイルではペアでも技よりステップの方がメインだということはすでにお伝えしましたね。
ペアで同じステップを同時に踏むということは、お互いに体を支え合わなくてはいけません。
つまり、2人を繋げている両手でお互いにバランスをとる必要があるということです。
そうなると、どちらか一人が上半身のムーブメントを入れたりなどしたらすぐにバランスが崩れてしまいますね。
しっかりステップを踏むためには、上半身は固定されていなければいけません。
そのため、カリスタイルでキューバンのような上半身のムーブメントが見られることはほとんどないのです。
ここでまた一つ別の動画を紹介しましょう。
最近ではカリスタイルでも、他のスタイルや他のジャンルのダンスとフュージョンされることが増えてきたそうですが、この動画は伝統的なカリスタイルの踊り方であるとリカルド先生が教えてくれました。
男性も女性も上半身がしっかり固定されているのがわかりますよね。
⑤プエルトリコやNY、ベネズエラのオルケスタの曲で踊られる
前回の記事で、キューバンスタイルはキューバのバンド、オルケスタの曲で踊られると紹介しました。
ではカリスタイルはどうなのでしょうか?
カリスタイルは、特に60年代のプエルトリコやニューヨーク、そしてベネズエラのオルケスタの曲で踊られることが多いそうです。
カリスタイルと聞くと速い曲をイメージする人が多いかもしれませんが、ソーシャルの場ではゆっくりな曲も沢山かかるそうですよ。
⑥ショーではテンポが速い曲が好まれ、多くのアクロバットが繰り広げられる
カリスタイルのショーでは基本的にテンポが速い曲が好まれます。
カリスタイルと言えば高速ステップのイメージがあるという人がいるのは、そういうショーのイメージが強いからでしょう。
ただ、それはあくまでショーであるからです。
カリスタイルのショーでは、テンポの速い曲で複雑なステップをいかに正確に踏むかが求められます。
そしてアクロバットが多いのもカリスタイルの特徴です。
まるでサーカスのショーを見ているかような、ひやひやさせられるアクロバットの数々がステージ上で繰り広げられます。
キューバンスタイルとは正反対ですね。
ここでカリスタイルのショー動画を2つ紹介しましょう。
次何が起こるのか予想する間もなく振付が進んでいくのですっかり見入ってしまいますよね。
カリスタイルは上半身を固定していてムーブメントが少ないと書きましたが、実は腰はすごく使っているんです。
上半身を固定させた状態で腰をひねらせうまく利用して足を動かしているので、本気でやると結構腰にきます。
その状態でこのように速いスピードでステップを踏み続けるのは本当にすごいなぁと感心せざるを得ません。
さて、今回はカリスタイルの特徴を紹介してきました。
サルサと一言で言っても本当に幅広い。
キューバンスタイルとカリスタイルだけでもどれほど違うかわかっていただけたのではないでしょうか。
違いを知れば知るほど楽しくなります。
次回はLAスタイルの特徴について書いていきます。
また次回もお楽しみに♪